多田喜一郎

春蘭の里実行委員会事務局長
(石川県能登町)
ただ・きいちろう

1948年生まれ。砕石会社の会社員など を経て、
91年多田興業輸送 (有) 設 立、代表取締役社長。
96年春蘭の里実 行委員会設立、
97年民宿「春蘭の宿」 開業。
2003年紙谷砕石 (株) 代表取 締役社長。
山村生活が体験できる農家 民宿の仕組みを地域に導入、日本の原 風景と重なり海外からの訪問者数も伸び ている。

 

 

 

 

農家民宿で地域おこし 春蘭の里の取り組み

 

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紹介いただきました奥能登の「春蘭の里」の 多田でございます。私たちの取り組みを、いま 少しばかり話をさせていただきます。
私たちは 平成 8 年に10年たったらこの地域どうなるか な、というところから地域を何とかせなきゃな らんということで、
行動を起こしたわけでござ います。

18年あまりたちまして、47軒の農家民宿、 1 万人の方々が延べ人数ではございますが来てく れて、その中に外国の方々が
1700人来ていただ いておる、というのが現在の春蘭の里でござい ます。私たちは農業の再生と農村の再生、地方の再 生、
地域の再生は、別だという考えで取り組ん でおるわけでございます。
もちろん、地域の再 生は若い者が戻ってきて、赤ん坊の泣き声が聞 こえるような、そんな地域をつくらなければ
は地域ではないというような考えでございます。


若い者が戻って来て、赤ん坊の泣き声が聞こ えるためには何が必要なのか。それは単純なこ とですが、生活をできるだけの金の循環が至ら なければならない、回らなければならないとい うような私の考え方でございます。ですから、 私たちは若い者が生活するためには、農家民宿 1 40万の収入を上げて、若い者が戻って来 られる条件を、元気な高齢者がその環境をつく ろうというような考え方であります。元気な高 齢者こそが、私は地方の地域の資源であるとい うような捉え方であります。

そして、若い者の声が聞こえるようなそんな 資質、 1 40万の収入というのは私たちの農家民宿で、
1 1 人泊まれば 1 万円、正式に言うと 1 万と260円なんですが、そういう価格の設定でございます。
ですから、 5 人のグループに来ていただいて 5 万円、それが 8 日間で40万円
でございます。40万というのは、隔週の土曜 日、日曜日にお客さんに来ていただいて、月曜 日から金曜日は畑の仕事をしたり田んぼをした り、子どもの教育の徹底をしたり、というよう な、地域にゆとりのある、そういう生活をつく ろうというのが私たち、春蘭の里の考えです。 そんなにもうからんだろう、これも当たり前で す。

私たちは今、目標の 1 40万というのが、 1年間で 1 月か 2 月でありますが、 2 軒か 3 軒の 農家が達成してきている、という考え方でござ います。ですから、私たちがもっともっと頑張 れば実現不可能ではない、実現可能な数字であ るということでございます。その中に特筆すべ きことは、外国の方々がよく来てくださって、 先ほど知事さんが言われたように、今年の 4 月の上旬からイスラエルが来て、そして 5 月の上 旬から教育旅行修学旅行の団体が入ってくる、 というような地域であります。私たちは行政に 頼らない地域をつくろうという思いでございま す。しかしながら、行政が応援をしてくれるよう なシステム、行政が応援をしてくれるような地 域づくりを目指そうというような取り組みでご ざいます。なぜならば、行政はその地域が本気 で取り組んでいるかいないか、本物なのかどう なのかをきちっと見ることができるのが私は行 政だと思っております。ですから私たちの所に は、いろいろな行政のシステムが入ってきてお ります。
これも直接の助成金ではないけれど
も、こういう関連でこういうのをというよう な、いいシステムが春蘭の里に入ってきており ます。そういう効果もありまして、 1 万人の観光客 の方々が延べ人数ではありますが来てくれてい る。そして外国の方々が来てくれている、外国の方に至っては、 1 2 日なんですが、私たち 当然、言葉は通訳の一人しかおられません。そ れでも何となくうまくコミュニケーションが取 れて、外国の方々が次から次へとお客を送って いただけるというのは、やはり元気な高齢者が プラス思考に物事を考えて接してくれることな のかなと、それが外国の方々にも喜ばれている ことなのかな、というような感じであります。 今後もこれを、もっともっときちっと続けて、47軒の農家民宿が全て目標を達成できるよ うに。また、この取り組みが奥能登では一番現 金に直結するような、つながるような取り組み だと思っておりますので、奥能登にずっと広げ て、奥能登の活性化を目指したいと思っておる

春蘭の里でございます。以上です。

 

 

──これから農業を地域の産業として、どうや って核にしていけばいいのか。いかがでしょう か。

 

 

先ほどの話にもあったように、何もない 所に 1 万人近くのお客がどうして来るんだろう ということだろうと思います。結果的に、私た ちが地域の特色をきちっと出した結果なのかな ということだと思います。

外国の方々が来られて、通訳の方に通訳をし ていただくと、東京に泊まっても、パリに泊ま っても、ロンドンに泊まっても、ニューヨーク に泊まっても、ホテルで泊まれば同じというよ うな返事が来ます。日本に来たら日本のきちっ とした伝統的なものを感じることができる所に 泊まってみたいし、食事をしてみたい。こんな 感じです。


それから日本の人に至っては、もう有名な所 はふた回りも行ってしまった。特色のある地域 に行ってみたいし、スーパーで売ってない物が
食べてみたい、というようなお客さまの声で す。ですから私たちは、地域の物しか出さない。 地域の物というのは、山菜に野菜に川魚。そし て、手作りの箸で、器は輪島塗の器ということす。
外国の方に至っても、そのままの料理の 体系であります。それが非常に喜んでいただけ るというのは、やはり「日本だな」というよう な感じ方ができるのからかなと。だから私は、 地方は地方の特色をきちっと発信することが一 番いいのでないかという思いでございます。そ して、外国の方も酒もよく飲まれます。パーテ ィー形式になります。

そのときに、輪島塗の大 杯で酒を飲むと、皆さんが盛り上がるので、日 本の伝統的な文化を前面に出せば、きちっとし た評価がいただけるということだろうと思いま す。もう一つは、私たちの活動の中に欠かせない のが教育旅行、修学旅行です。この教育旅行に 至っては、ご存じの通り「子どもプロジェク ト」がありますね。この子どもプロジェクトが ですね、ここに行政の方々が非常におられます が、総務省の関係では、特別交付税で食料費以 外は半額戻ってくるような制度があるかと思い ます。あれをぜひ交付税ではなくて交付金の形 で、行政の方々が分かりやすい、使いやすいよ うなシステムにしていただければ、もっと地方 に子どもが入ってくれるのかな。学校の先生 は、地方に大いに送って、そして教育効果が出 るのは分かっていますので、体験をさせてみた い。体験重視型になりつつありますので、「こ ういう制度があるよ」というものをはっきりと 学校に言った方が、学校はいろいろな即決的な 効果が出てくるんではなかろうかと思っており ます。

子どもプロジェクトはちなみに、小学校 5 年生程度の子どもを何泊か、日本全国の小学生を 基準にした、そういう学生さんを地方に送り込 む。そうすることによって、きちっとした教育 効果が表れる。ですから、これを法律ではない けれども、やっていきたいというような国の方 針の一環だと思います。中学生に拡大し、高校 生に拡大し、それからまた、グループ的な活動 にも拡大されていくんではないかな、というよ うなことだと思います。


私たちは地方の一つの結果として、地域全
体、集落全体がやるのもいいですが、それには 結果が遅すぎる。だから好きなもの同士が集ま って、先に先発隊としてきちっと行動してい く。それによって理解を示してくれた人には、 一緒にやっていただくというような方法で、現 在に至っております。

 

 

──追加でお話があればどうぞ。

 

 

非常に効果があるのは、地方の大学の 方々との連携。これ非常に大事だと私は思って おります。私たちの所に、いろいろな大学の生 徒さんが来ておられますので、これがもっと往 来すればいいのかなということと、いろいろな 方々が住みたいと言ってきておられますので、 住みたい方々の要望をかなえるためには空き家 対策。すぐ入ってきて住めるような対策を、こ れからしていかなければならないのではないか なという考えです。



小松市にて収録